【学力の経済学】中室牧子先生のセミナーに参加してきました!

こんにちは!くずはBASEの坂下です。

先日、著書『学力の経済学』で有名な中室牧子先生のお話を聞いてきました✨

これがめちゃくちゃ面白かったので、みなさんにお伝えできるように要点を絞ってまとめていきます。

未就学のお子さんから、中高生にも役に立つ内容ですので少し長いですが是非最後まで読んでみてください!

最初に

塾関係者が多い中、セミナー冒頭から耳の痛い話でした笑

中室先生

これは『教育あるある』で、経済や財政の話では経験論で話す人はいないが、こと教育のことになると「私の経験では・・・」「私が学生の頃は・・・」と語りだす人が出てくる

本当にその通りです💦

中室先生の話は政府の会議上のことでしたが、塾をやっていても自分の経験や過去の生徒に照らし合わせて話をしてしまっています。

さらに、

中室先生

子ども全員を東大に入れたお母さんの話など、『例外的な』出来事が衆目を集める傾向にあるが、個人の体験談は必ずしも全体を表さない

これもその通りですね💦

「〇〇点上がりました!!」「△△高校に〇名合格!!」と塾はすぐに言いますが、「自分の子も!?」と

思っても、そうはいかない場合もあります。

中室先生

個人の体験を大量に観測して得られる規則性を見出すことが重要

教育に重要な観点は一個人の成功体験ではなく、科学的に根拠に基づく教育ということですね。

認知能力と非認知能力

中室先生

アメリカの有名な研究で「就学前の質の高い教育は40歳までその効果を発揮する」とわかった。しかし、それは『認知能力が高くなったから』ではなく『非認知能力が高くなったから』と考えられる。

認知能力 = 知能検査で測定できる能力のこと(学校のテストなど)

非認知能力= 知能検査で測定できない能力のこと(自己認識、意欲、忍耐力、自制心、創造性、好奇心が強い、協調性など)

これらの非認知能力を高めることで、収入、犯罪への関与率、望まない妊娠、健康にまで良い効果を与えるそうです。

たしかに忍耐力や自制心は肥満率に、自己認識の高さは避妊率になど、いろいろなところに影響を与えそうですね✨

当然ですが、非認知能力は認知能力の向上にも影響を与えるとおっしゃっていました。

非認知能力を向上させる研究は小学生を対象にも行われており、実際に効果も見られているようなので

「もう小学生だから」と思わず、日々の声掛けからやふれあいから伸ばしていけるといいですね。

セミナー内では非認知能力を伸ばす具体的な方法には言及されていないので、今はここまでにとどめます。

優秀な友達から受ける影響は「良い」影響だけなのか?

要するに、偏差値の高い学校へ進学をすることが本当にいい選択なのかということです。

偏差値と収入の関係

中室先生

ここでクイズです、二人の出木杉くんがいたとします、

一人は偏差値70の大学の進学し、40歳時点で年収1200万となりました。

もう一人は受験に失敗し偏差値40の大学に進学しました。この出木杉くんの40歳の年収はいくらだと思いますか?

さあいくらでしょうか??もちろん答えはありません。どう感じるかです笑

中室先生

この答えが「偏差値の高い大学へ行くことが、将来の年収を高める」という問いへ必要な情報です。

みなさんがどう思われたかわかりませんが、ひょっとすると「1200万円に近い年収」と思われた方が多いのではないでしょうか?

私はまさに「1200万ぐらい」という答えでした。つまり偏差値ではなく能力が年収に影響すると考えたわけです。

実際の研究では出木杉くんは二人いないので、そういった状況の双子の方に協力を得て進めるそうです。

中室先生

こういった研究のほとんどが偏差値の高い大学へ行くことは、将来の収入に大きな影響を与えないということを示している

誤解を招かないために補足をすると、偏差値の高い大学出身者の方が平均収入は高くなっています。

中室先生のお話はほぼ同じ能力の人で大学偏差値に違いがある場合の話です。

偏差値と成績の関係

ここからは埼玉県の学力調査の結果も用いて説明されていましたが、結論を先に書くと

学力に余裕を持った進学の方が将来へいい影響を与える、ということです。これを

鶏口となるも牛後となるなかれ(大きな組織の後ろにつくより、小さな組織のトップでありなさい)

「井の中の蛙」効果(人は属する組織の中で他社と比較をし、自分の能力を判断する)

の二つの言葉で説明していました!

実際の研究で、「学校は違う」が「偏差値は同じ」である子どもを比較すると学内順位が高い生徒の方が、その後の人生によい影響を与えているそうです。

この調査は世界中で行われているらしく、地域による違いは見られないようです。

つまり、レベルの高い学校で下位にいるよりも、成績上位にいられる学校に進学した方がその後の人生はいい方向に進んでいくということです。

さらに中学受験をした子を対象に、入学試験の成績とその後の成績推移を比べた調査によると

  1. 入学試験の成績と1年生5月の定期テストには相関関係がない(=上位入学が最初の定期テストでいい点数をとっているわけではない)
  2. 1年生5月の定期テストと1年生の総合成績には強い相関関係がある(=最初の定期テストで好成績の生徒は1年間の成績もよいことが多い)
  3. 1年生の総合成績と3年生の総合成績には相関関係がある(1年生の成績上位者は3年生でも成績上位の場合が多い)

という傾向がみられたそうです。

要するに、最初の定期テストを頑張って上位に入れれば、3年間上位でいられる可能性が高いということです。

塾側の視点で見ると、私立中学と高校であれば最初の定期テストで上位に入ることはほとんどの子が可能です。

中室先生

この要因を調査したところ「教員とのかかわり」や「親の教育投資」はデータ上、否定された。「本人の自己効力感」によるものが強い

「自分はできる!」と感じることがその後の成績に大きな影響を与えるということですね。逆もまたしかりです。

中室先生

無理に偏差値の高い学校に入る必要はない。他人との比較でなく、過去の自分との比較することで能力を高めていけることも研究で示されている

「できるだけレベルの高い環境が自分を高めてくれる」というものに科学的根拠はないし、今いる環境で順位を気にするよりも過去の自分と比較していくことが自分の能力向上には価値があるということです!

まとめ

いかがでしたしょうか?

「当然そうでしょ?」と思うこともあるかと思いますが、本当に世の中の人がこういった事実を理解しているかは疑問です。

中室先生

教育論だけは経験で語られがちである

と言う言葉が示す通り、多くの大人が教育を経験しています。

全員が「教育を受ける側」であり、子どもや後輩へ「教育をする側」でもあるからです。

とは言え、「科学的な根拠」がすべての子どもに適応できるわけではありません。

学校や日本の教育の仕組みはこういった根拠に基づき組織されるべきですし、

我々のような塾や学校の先生はこういった事実も認識したうえで、柔軟に対応することも必要かと感じます。

無理のない進学先を選んだ結果、学校が勉強に集中できる環境でなかったのなら意味がありません。

私は個別指導の塾が好きなので、理屈だけで話をしていきたくはないですが、経験だけで話す方が怖いなと思います。

生徒に勉強しなさいという立場である以上、私自身もまだまだ勉強していかなければなりませんね。

今回の話に興味を持たれた方は是非、中室先生の本も読んでみてください。

くずはBASEにもございますのでお越しの際には試し読みもできます!

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます✨